段ボールによる錆発生原因と対策を説明します。
段ボールによる錆発生原因
・段ボールの吸湿と含有成分溶出による水の酸性化
紙のような物は、相対湿度75%以上になると繊維中で毛細管凝集が発生して湿気る。この時、段ボールに含まれる塩化物と硫酸塩が水に溶出して酸性になる。この状態で金属に接触して錆が発生する。
表1:各種ライナ(段ボールの平たい面の紙)の錆発生率とイオン分析結果
五十嵐清一:新版段ボール製造・梱包技術 実務編,p448(2002)
ライナ | 発生率(%) | pH | Cl–(ppm) | SO42-(ppm) |
B 150 | 8.4 | 6.7 | 50 | 150 |
B 220 | 14.7 | 6.8 | 46 | 53 |
NC 170 | 16.1 | 7.6 | 60 | 101 |
NC 120 | 44.6 | 7.2 | 62 | 545 |
WK 280 | 45.3 | 5.3 | 18 | 909 |
WK 150 | 51.4 | 5.1 | 15 | 1155 |
B 280 | 74.7 | 6.6 | 217 | 218 |
B 280 | 77.0 | 6.0 | 213 | 156 |
C 170 | 77.8 | 6.2 | 75 | 745 |
B 280 | 100.0 | 5.3 | 339 | 365 |
※イオン分析はライナを熱抽出し、pHメーター、イオンクロマトアナライザを用いて行った。
発錆テストに使用した鋼板はJIS G 3141に定められている冷圧延伸鋼板SPCCブライト仕上げを
使用した。
錆発生率20%以下の場合Cl-が60ppm以下、SO42-が150ppm以下である。
発生率がそれ以上の物はCl–またはSO42-が200ppm以上である。
・段ボールから放出される硫化水素
段ボールは製造時に硫黄分を含み、硫化水素ガスが発生する。このガスにより錆が発生する。
段ボール要因の錆対策
硫黄分、塩素分の少ない段ボールを使用する。例えば王子製紙が開発した還元性硫黄(SⅠ、SⅡ)の含有量が少ないパルプを原料として、添加物、用水などにも改良を加えて製造したNS段ボール(Cl–42ppm、SO42-75ppm以下)がある。
段ボールに直に梱包しない。袋に入れて密閉梱包の上段ボールに入れる。
レンゴー(株)が開発した硫酸ガスを吸着、除去する段ボール『ガストルデ』を使用する。
段ボール梱包時に防錆剤、防錆紙を使用する。段ボールに防錆剤がコーティングされた物もあります。例『サビンデ』:レンゴー(株)開発、『サビナイズFe』:王子コンテナー(株)
参考文献:五十嵐清一:新版段ボール製造・梱包技術 実務編,p445~450(2002)
新田茂雄監修,21世紀包装研究会編:包装実務ハンドブック,p106~107(2001)
腐食防食学会編:電子機器部品の腐食防食Q&A第版,p36(2019)
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